【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
来るのが遅くなって、ごめんね。
あたし、アキちゃんや過去と向き合おうと思って来たの。
アキちゃん。
アキちゃんはどうしてあのとき、あたしを庇ってくれたの…?
それに、この前の事故の時の手。
あれは、もしかして…―――。
ゆっくりと顔をあげると、写真の中であの頃のままのアキちゃんが、あたしに笑いかけてくれていた。
リビングへ戻ると、アキちゃんのお母さんが紅茶を出してくれた。
「ありがとうございます…」
甘くていい香りの、懐かしい味だった。
「柚姫ちゃん、あなた声が出るようになったのね」
…あたしの声が出なくなったこと、知ってたんだ。
「すみません。先日、出るようになりました」
「そうなの…。」
アキちゃんお母さんは、ゆっくりとカップを傾けた。
あたし、向き合わなければと思って来たけれど、どうするべきか考えていなかった。
まさかお線香をあげさせてもらえたり、お茶を出してもらえるなんて…。
けれど、このままこうしているわけにもいかない。
「あの…っ」
「…わたしずっと、後悔していたのよ」
え…?
「3年前のあの日、わたしは何もわかっていなかった。」
アキちゃんお母さんは、悲しそうに微笑んだ。
「あなたのせいで瑛は死に、のうのうとあなたは生きているなんて、理不尽だって。そうとしか思えなかった」
わかっていたことなのに、ツキンと胸が痛んだ。