【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
あたしの中で、嫌な記憶が甦る。
12月22日。
今日、柚を問い詰めたらとうとう口を割った。
三年生の先輩に嫌がらせを受けてるって。
一年のくせに調子に乗るなとか、大して上手くないくせに、とか陰口を言われたり、持ち物にいたずらされたり。
結構前からあったらしい。
あたしとしたことが、気付けないなんて。
ムカつく。
あのとき、なんでもっと早く言わないの!とすごくアキちゃんに怒られた。
と思ったら今度は泣きながら気付けなくてごめん、って謝ってきて。
二人で抱き合って大泣きした。
そしてその時、アキちゃんと約束したことがある。
『隠し事は絶対にしない』
そして、もう一つ。
12月23日。
今日は終業式だった。
例の先輩たちを呼び出して、文句を言ってやった。
けど、人数は向こうのが多くて、あたしは散々ボコられた。
でもすぐに先生が来てくれて、先輩たちは停学。
ざまぁみろ。
アキちゃんが傷だらけで来たときは、本当に驚いたし、心配した。
あたしなんかの為に、危険な真似をしないでと言ったけど、アキちゃんは嫌だと言った。
『あたしは、あんたの歌が好きなの!!だから決めた!あたしは、絶対に…―――』
3月14日。
あの先輩たちは卒業。
これで、一安心。
けど、まだ油断は出来ない。
これからもまたああいうことがあるかもしれない。
だからあたし、決めた。
絶対、絶対に、
柚と、柚の歌をあたしが守るって。
何があっても、絶対に。
柚の歌が、大好きだから――――。
『あたしは、柚の歌を守るの!!だからあんたは、何があっても歌い続けて。その声の限り、いつまでも。約束だよ?』
…ああ、そうか。
三年前、アキちゃんが守ってくれたもの、それは……。