【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
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「またいつでも、来てちょうだいね」
「はい、お邪魔しました」
ようやく泣き止んだあたしは、アキちゃんの家を出る所だった。
アキちゃんのお母さんの微笑みが3年前と同じで、優しい。
「あ、そうだわ。ごめんなさいね、少し待っててくれる?」
そう言うや否や、アキちゃんのお母さんは慌てて二階へと上がっていった。
それからしばらくして、見覚えのあるものを手に戻ってきた。
「そ、れは…アキちゃんの…!!」
アキちゃんの、ベースだった。
「ずっと大切に取っておいたのよ。あの子が大切にしてたものだから」
いつも重たいそれを背負って歩いていたあたしとアキちゃん。
一緒に練習して、いつだってあたしたちと共にあったものだ。
「あの…?」
「これ、もらってくれないかしら?」
「え…!?」
「瑛はあなたの歌が大好きだったけれど、同時にあなたと演奏をするのが好きだった。」
二人で、一つの音。
あの事故の日、誓った言葉だ。
「だからどうか、あなたの歌と共に、あの子の音を。」
「……はいっ。ありがとう、ございます…!大切にします…」
アキちゃんのベースを、大切に受けとると、アキちゃんのお母さんは満足そうに微笑んだ。
――――こうして、あたしは過去から前に進むことが出来た。
これもみんな暁くんのおかげ。
だからあとは暁くん、待ってるよ…。