【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
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「(なんだ、アキラ。)」
オルドリッジ家に戻ってすぐ叔父を訪ねると、叔父は苛立っている様子だった。
「(すみません、叔父さん。少しいいですか)」
「(…手短に済ましてくれ。私は忙しい)」
「(はい。お時間は取らせません)」
すぅ、と深呼吸をして一気に用意していた言葉を出した。
「(俺を、オルドリッジから縁を切らせてください)」
「(…ほぉ。)」
叔父さんは、大して驚いた様子を見せなかった。
「(お前は私やオルドリッジを裏切ると?今まで散々世話をしてやったというのに、この恩知らずが)」
ぐっ、と出かかった言葉を飲み込む。
駄目だ、表情に出してはいけない。
平然を装え。
じゃなければ、言い負かされる…!!
「(…恩知らずは重々承知です。ですが俺は、ジェシカ嬢とは結婚できません)」
「(なぜだ。)」
「(…日本に、誰よりも、自分よりも大切だと思う女性がいるからです)」
「(ふっ、お前は何をいっている?そんな一時的な感情で人生を棒に振るのか?)」
「(一時的などではありません。そして彼女といることは、俺の人生で最善の選択です)」
「(…お前の覚悟は?オルドリッジを裏切るのだからそれなりのケジメは見せてくれるのだろうな?)」
…きた。
覚悟はとっくに決めてる。
俺の持ってるもの、すべてをくれてやる。
「(俺の持つもの、すべてを。両親の残した遺産も、お祖父様が残して下さった俺に分与された遺産、すべてを。)」
…俺には、こんなものしかないから。
これで良ければ、いくらだってくれてやる。