【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「(あの男が、私から妹を、アイリスを奪った。そしてお前もだ、アキラ。お前が生まれて、アイリスが日本にさえ行かなければあんなことにはならなかった)」
「(……)」
あの悲惨な家の景色を思いだし、唾を飲み込む。
ダメだ、顔に出すな。
平然としていろ、弱味を見せるな…!
「(本当に、忌々しい。だが、まあこれで、厄介払いが出来たことに代わりはない)」
え……
「(その父親に似た顔を、二度と私に見せるな。何もいらん、だからもう好きなようにしろ。)」
「(叔父さ…)」
「(わかったら、出ていけ。二度とこの家に踏みいることは許さん)」
…ありがとう、ございました。
叔父さんの後ろ姿に、深く頭を下げて、叔父さんの書斎を後にした。
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叔父さんの書斎を出て、エントランスへ行くとそこには意外な人物が待ち構えていた。
「キース…」
オルドリッジ家、時期当主であり、エドガーの実の兄のキースがそこにいた。
「話はついたのか」
エドガーとは対照的な、相変わらずの仏頂面からは彼の心情は読み取れない。
「…ああ、今まで世話になった」
「勘違いするな。俺はお前の世話など焼いた覚えはない」
「そうだね、じゃあ俺はこれで失礼するよ」
「…アキラ。」
すっ、とキースが近寄ってきたかと思った瞬間。
バキッ
鈍い痛みが俺の左頬に走ったかと思うと、体は壁に投げ出されていた。
キースに、殴られた。