【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐




「(あの男が、私から妹を、アイリスを奪った。そしてお前もだ、アキラ。お前が生まれて、アイリスが日本にさえ行かなければあんなことにはならなかった)」





「(……)」





あの悲惨な家の景色を思いだし、唾を飲み込む。




ダメだ、顔に出すな。



平然としていろ、弱味を見せるな…!






「(本当に、忌々しい。だが、まあこれで、厄介払いが出来たことに代わりはない)」





え……





「(その父親に似た顔を、二度と私に見せるな。何もいらん、だからもう好きなようにしろ。)」




「(叔父さ…)」




「(わかったら、出ていけ。二度とこの家に踏みいることは許さん)」






…ありがとう、ございました。



叔父さんの後ろ姿に、深く頭を下げて、叔父さんの書斎を後にした。







***********







叔父さんの書斎を出て、エントランスへ行くとそこには意外な人物が待ち構えていた。





「キース…」




オルドリッジ家、時期当主であり、エドガーの実の兄のキースがそこにいた。





「話はついたのか」




エドガーとは対照的な、相変わらずの仏頂面からは彼の心情は読み取れない。




「…ああ、今まで世話になった」




「勘違いするな。俺はお前の世話など焼いた覚えはない」




「そうだね、じゃあ俺はこれで失礼するよ」




「…アキラ。」




すっ、とキースが近寄ってきたかと思った瞬間。




バキッ




鈍い痛みが俺の左頬に走ったかと思うと、体は壁に投げ出されていた。




キースに、殴られた。





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