【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「(…忘れるな、アキラ。お前の帰ってくる家はここだけだ。)」
「(…ありがとう、キース)」
俺が微笑むとキースは腕を組んで、ふんっと顔を反らした。
「(…兄だからな。)」
「(あぁ…)」
ゆっくりと起き上がって、真っ正面からキースと向き合う。
「(俺は初めて、お前の目が綺麗だと思えたよ。)」
「(…そう。またね、兄貴)」
キースは最後にふんっと鼻を鳴らし、廊下の奥に消えていった。
今までは俺から距離を取っていた。
嫌われているし、苦手な感じのタイプだと思っていたから。
けれど初めてちゃんと向かい合って、本音で話をした。
そうしないとわからないことも、あるんだな。
自分の視野の狭さに苦笑し、屋敷を出て庭を歩いた。
次にここに帰って来られるのはいつになるのか。
きっとそのうち…。
「(やぁ、アキラ。…って、そんな嫌そうな顔しないで)」
屋敷の正門を出た時、車に寄っ掛かって俺に手を降る男に、ため息が出た。
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「(なんだ、聞いてなかったのか。キースも性格が…じゃない人が悪い)」
本音漏れてるぞ、エド…。
門のところに車があったが、なぜかエドガーまでくっついてきて、車内で二人向かい合っていた。