【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
それから、二人で一緒にリコールに行った。
暁くんの姿に、始めはみんなポカンとしていたものの、やがていつものように口々に文句を溢す。
「何普通の顔して戻ってきてんだよ、薄情者め」
「急にいなくなるからビックリしたんだぞ。一言もなしとか最悪だよな」
「…はた迷惑。」
「だから、ごめんって」
冷たいみんなを苦笑いを浮かべながらなだめる暁くん。
でもそれが、すごく懐かしい光景だった。
なんだかんだ言いつつ、結局みんな暁くんが好きで、暁くんが戻ってこれたことを喜んでいるんだなと感じられた。
そしてもちろん、あたしの声のこともみんなをすごく驚かせた。
みんな自分のことのように喜んでくれて。
優兄なんか、ちょっぴり目が赤かった。
それをみんなにからかわれて、照れ隠しに散々頭を撫でられたのだけど、ぐしゃぐしゃになってもちっとも嫌じゃなかった。
こうしてあたしたちの日常は、より輝きを増して戻ってきた。
「みんな、驚いてたね」
「うん、そうだね」
みんなと別れてから、街灯だけが照らす暗い道を、暁くんと並んで歩く。
「暁くん。」
「ん?」
「その…、話はどうなったの?」
「まぁ、問題なくって感じかな」
「あたしのせいで、家を出ることになってしまったこと、ごめんなさい」
「柚は悪くないよ。俺が君といたいと思ったから、そうしただけ」
「でも…」
たったひとつの、実家なのに…。
「大丈夫だよ。ひょっとしたら、叔父さんとはいつか和解できるかもしれない」
「えっ!本当に…!?」
「ああ、だから君は気にしなくていい。きっといつか、一緒にイギリスへ行こう」
「うん、行きたい」