【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
♪ 声を失った少女
柚姫ちゃんがせっせと掃除をしているのを眺めながら、俺は紅茶を啜った。
どことなく楽しそうに見える柚姫ちゃんに、思わず笑みがこぼれた。
声がでないという、人よりもハンディがある状況で、どうしてここまで気丈でいられるのだろう。
―――俺とは、大違いだ。
その時、ふと携帯が鳴った。
ディスプレイを確認すると、“佐倉 愁生”の文字。
何事だろうと、ボタンを押して電話に出る。
「俺だけど。どうかした?」
『あ。アキ?あのさ、今日の練習早めに始めねぇ?いまどこにいる?』
「いいけど。今、リコールにいる。」
『早っ!なんでもういんだよ。』
「まぁ、ワケアリ?でさ、今日お客さんいるから。」
『客?まさか、新しいボーカル見つけてきたか?』
「いや?ただの友達?」
『なんだよ。じゃ、なんだよそいつ』
「口実付けて連れ回してる女子高生。」
『はぁぁっ!?』