【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
あたしが歌う理由が、また1人増えた。
そしてこれから、あたしの夢は違う光を放つ。
「…じゃあ、ごめん。あたしもう行くね」
「行くってどこに!?結果発表これからだよ?美男美女コンテストもこれからだし…」
「いいよ。とりあえず計画は実行できたし、あとは残りの約束を果たしてくる。また明日ね」
みんなに手を振り、あたしは駆け出す。
あの人のもとへ。
「ごめんねっ、おまたせ」
校門のところで待っていてくれた彼にそう声をかけると、彼はニッコリと微笑んだ。
「ううん、全然。それに、柚の歌聞きながらだったし」
「えっ嘘!いくら屋外だからって、距離があるのに…」
「声量があるし、柚の声は通るからね。すごく良かったよ」
「あ、ありがとう…」
いつものように言われる言葉だけれど、毎回のように照れてしまう。
「じゃあ行こうか、俺のカナリア?」
これにも、慣れない。
どうして暁くんはこう、恥ずかしいことを涼しい顔して…。
「ん?行かないの?」
「…行くっ」
差し出された手を、ごく自然に握りしめる。
指を絡める恋人繋ぎには、いつの間にか慣れていた。
…普段から、もっと恥ずかしいことをされてるからなんだと思うけど。
いやいや、今はそんなことより…。
首を振って、あたしは頭を切り替える。
「ドキドキする、どうしよう」
「大丈夫だよ。みんなこの日を楽しみにしてたんだから」
「うん…。」