【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
頭の中で、ずっと考えていた言葉をリピートする。
大丈夫、変じゃないよね?
何度も深呼吸していると、ついに目的地へと着いてしまった。
ライブハウス、リコールへ。
「大丈夫?」
「う、うん…。」
あたしが緊張しているのを見抜いたのか、暁くんは繋いだ手に力を込める。
「大丈夫だよ、いつもどおりに。」
「…うん。」
そうだね、いつものように…。
緊張をほぐそうとしていたら、暁くんがまっすぐにあたしを見つめて微笑んだ。
そして、繋いでいたあたしの手を持ち上げると、指先に柔らかく唇を落とす。
「わっ…!」
「大丈夫だよ、自信を持って。俺の歌姫は、どこでもいつでも、キラキラと輝く宝石なんだから…。」
う、わ……
こんなクサイ台詞でも、バッチリきまってしまうのが暁くんのすごいところ。
「わかった?」
暁くんの自信満々な姿に、あたしの表情も緊張も緩む。
「もう大丈夫。ありがとう、暁くん」
あたしも暁くんの手を握り返し、二人で中へ入る。
中ではすでに、原田さんとRainのみんなが待ち構えていた。
「柚姫ちゃん、アキ、いらっしゃい。」
「こんにちは原田さん、みんなも。」
暁くんに続いて、あたしも会釈する。
大丈夫、大丈夫。
「それで今日は、どうしたんだい?」
言える。
だって、みんなだもの。
1年半以上、みんなと過ごしてきたから。
だからあたしは、みんなといたい。
あたしの新しい夢になってほしい。
だから、あたしは。