【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「皆さん、聞いてほしいことがあります。」
あたしの心は、ずっと穏やかだった。
「あたしにはかつて、大切な仲間がいました。一緒に夢を目指す、親友がいました。」
きゅっ、と繋がった手に力がこもる。
「あたしは彼らとバンドを組み、親友と共にプロになることを目指していました。けれど、その親友は…。」
アキちゃんは…。
「あたしの歌を守り、死んでしまいました。けれどあたしには、彼女のそんな真意に気付けず、歌を封印してしまった」
今もまだ、後悔している。
あの3年間の日々を、今も。
「そして、約束しました。絶対に歌をやめない。いつまでも、歌い続けると。夢を叶えると。」
アキちゃんのベースにかけた、二人の願い。
「あたしは歌いたい。そしてその夢を、ここで叶えたい。」
ここにいる、みんなと。
だから、あたしは。
「…あたしを、Rainのボーカルにしてください。」
あたしの夢は、AriceからRainへと変わって、別の光を放つ。
「待ってました。」
ニヤリ、と原田さんが口角をあげた。
「ようこそRainへ、柚!」
その言葉を皮切りに、一斉にクラッカーが鳴り響いた。
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「…アキちゃん、あたし思うんだ」
あたしは、宮寐と彫られた黒い墓石に語りかける。
「あのとき、暁くんとあたしが事故に遭いそうだったとき。」
今でもよく覚えている。