【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
俺はその後愁生に軽く説教を受け、電話を切った。
まったく、あいつは俺をケダモノか何かと勘違いしてんじゃないか?
「愁生からだったのか?」
「はい。早めに始めるみたいで、もう少ししたらみんな来るそうです。」
と、原田さんに軽く事情を説明する。
原田さんは、そうかそうかと楽しそうに頷いた。
この人はいつも飄々としていてつかみどころがない。
俺がここに来てしばらくたつが、今だ心中を探れないのはこの人だけだ。
いや、柚姫ちゃんもそうか。
まだ会って少しだが、だいたいの女の子ならわかってる頃だ。
彼女の声が出ないから?
いや、違う。
声がなくても、会話してたじゃないか。
…そうだ、俺…
柚姫ちゃんのこと、一つも知らないんじゃないか…?
女の子はいつも、自分のことを語りたがる。
俺はいつも、それを笑顔で聞いて、頷いて…。
だけど柚姫ちゃんのことは
聞いてなかった。
俺が、ずっと喋ってた。
こんなこと、初めてだ。