【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





またいつか、一緒にやりたいな…。




「…暇潰しには、なったでしょ?」




「すごく楽しかったです。李織さんのピアノで歌うの、好きです」




すると、ちょっとだけきょとんとした李織さん。




そしてまた、ほんのりと笑って



「俺も、好きだと思う。」




と言ってくれた。




「また今度しましょうね」




「…そのうちね。」






***********





「李織のやつ、寝てんの?」




「あっ、はい。」




買い出しから戻ってきた原田さんは、ソファーで寝そべる李織さんを見て、そう聞いた。




「なんか、楽しそうだね。いいことあった?」




「えっ、そう見えますか?」




「うん、見える」




あたしは、嬉々としてさっきの出来事について話した。




「へぇ、そりゃすごい。」




「ですよねっ。あんなキレイな弾き方する人、あたし初めてで…」




「じゃなくて、柚姫ちゃんがすごい。」




「あたしですか?」




意味がわからず、首をかしげる。




「あいつ、あんまりピアノ弾きたがらないからさ。」




「そうなんですか?」





びっくりだった。



あんなに、楽しそうに弾いていたのに。





「まぁ、あいつも色々あったからさ。仕方ないと言えば、そうなんだけど。」




「色々…?」





「あいつもある意味、柚姫ちゃんと境遇が似てるよ。」




あたしと?




「一度夢を諦めて、絶望して。そこをアキが救い上げた。別の光を与えた。」




あたしもそうだった。




李織さんも、あたしと同じように夢を諦めた人?





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