【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
またいつか、一緒にやりたいな…。
「…暇潰しには、なったでしょ?」
「すごく楽しかったです。李織さんのピアノで歌うの、好きです」
すると、ちょっとだけきょとんとした李織さん。
そしてまた、ほんのりと笑って
「俺も、好きだと思う。」
と言ってくれた。
「また今度しましょうね」
「…そのうちね。」
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「李織のやつ、寝てんの?」
「あっ、はい。」
買い出しから戻ってきた原田さんは、ソファーで寝そべる李織さんを見て、そう聞いた。
「なんか、楽しそうだね。いいことあった?」
「えっ、そう見えますか?」
「うん、見える」
あたしは、嬉々としてさっきの出来事について話した。
「へぇ、そりゃすごい。」
「ですよねっ。あんなキレイな弾き方する人、あたし初めてで…」
「じゃなくて、柚姫ちゃんがすごい。」
「あたしですか?」
意味がわからず、首をかしげる。
「あいつ、あんまりピアノ弾きたがらないからさ。」
「そうなんですか?」
びっくりだった。
あんなに、楽しそうに弾いていたのに。
「まぁ、あいつも色々あったからさ。仕方ないと言えば、そうなんだけど。」
「色々…?」
「あいつもある意味、柚姫ちゃんと境遇が似てるよ。」
あたしと?
「一度夢を諦めて、絶望して。そこをアキが救い上げた。別の光を与えた。」
あたしもそうだった。
李織さんも、あたしと同じように夢を諦めた人?