【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
♪ 呼び起こされる記憶
「いやぁホント助かったよー。柚姫ちゃん、ありがとね。」
カウンターの向こう側で、原田さんは優しく笑った。
あたしも笑顔でそれに返す。
「柚姫ちゃん、毎日来てよ。代わりに紅茶ご馳走するから」
という原田さんの言葉にどうしていいかわからず、曖昧に微笑み返した。
「原田さん、調子に乗らないで下さい。」
すると、見かねたらしい暁くんが助け船を出してくれてホッとした。
「別にいいだろ。アキだって、柚姫ちゃんが来てくれたら嬉しいだろ」
「それとこれは別ですよ。」
「ったく、このフェミニストが。」
「海外じゃ普通ですよ。」
暁くんはそう言い捨てて残りの紅茶を飲み干した。
「やっぱりアールグレイはストレートに限りますね。」
「当たり前だろ。ってか話を変えるなよな」
「いいでしょ。この話は終わりですから」
「ったく、クソ可愛くない餓鬼だな」
「俺はもう大人です。」
そんな二人のやり取りが、なんだかこどもみたいで可笑しくて。
あたしは笑ってしまっていた。