【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
トラックの、耳障りな甲高いブレーキ音があたしの体を覆ってゆく。
とても早いはずのトラックは、何故かその時だけはすごく遅く感じて。
だけど、あたしの体は鉛みたいに重くなって動けなかった。
真っ白な頭の中、静かに死の事実だけがその存在を誇示していて。
まるで、あたしだけ違う時間を過ごしているみたいだった。
…ごめん、アキちゃん。
一緒にプロデビューするって約束、守れないかも。
ごめんね…。
どーーん…!
閑静な街には不釣り合いな音が轟いた…。
う…、いたい…。
ってか、トラックにひかれて痛いで済むって…。
…あれ?
死んだはずなのに、なんで痛いんだろう…。
あたしは、ガンガンする頭を押さえてゆっくりと体を起こした。
「…おい!救急車呼べ!」
「人がひかれたぞ!」
「うっわ…、ひでぇ…」
ガヤガヤと、異変に気付いた街の人たちの声が籠もってあたしの耳へと届く。
…あ、れ……?
なにかが、おかしい……