【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「中学生くらいの女の子だって…。」
「可哀想にねぇ…」
遠くで、救急車のサイレンが聞こえた。
朦朧とする意識の中、ようやく視界もはっきりして、あたしは初めてその事態に気付いた。
「…あ…!あ…そんな…っ!?」
全身が、恐ろしく冷たくなった。
どうしようもないほどに体が震える。
目の前にはガードレールへと衝突して大破したトラックと、興味津々に様子を伺う野次馬。
赤黒い血に濡れる道路。
そして…。
――ひかれたのは、あたしじゃなかった。
そこにあったのは
だらりと冷たいアスファルトに身を投げだし、ぴくりとも動かない大切な親友の変わり果てた姿だった。
―――柚。いつまでも一緒に、音楽やろうね。
あの誓いが、重く響いた。
「―――アキちゃん!!アキちゃ…!…いやぁあああああああっ!」
あたしたちが14歳の夏の日――。
親友のアキちゃんは、浅はかなあたしを庇ったせいで、その短い生涯を終えてしまった…―――。