【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
どう、して…。
あたしは、驚きのあまり固まってしまっていた。
彼が本物かどうか、ずっと食い入るように見つめていたのに、暁くんは全く笑みを絶やさなかった。
「迎えに来た。学校終わったよね。行こう。」
え?
行くってどこに?
そんなあたしの疑問を、暁くんは聞くまでもなく楽しそうに答えてくれた。
「いいから、おいで。」
あたしが反論する間もなく、(というか出来ないんだけど)暁くんに腕を引かれて学校を出た。
でも、どうして?
あたし、何も言わずに帰っちゃったんだよ??
「今日は、君を驚かせてあげるから。」
驚かせる??
「絶対にびっくりするよ。」
と、暁くんは楽しそうに笑う。
暁くんは、何を考えているんだろう。
「ところで、ちょっと…ていうか、かなり帰り遅くなっちゃうから、ご家族に連絡しておいてね。あ、門限とかあったりする?」
門限なんてないし、連絡も必要ない。
どうせ今日は帰ってくる日じゃないし。
あたしは、大丈夫と首を振った。