【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
第2楽章‐カンタービレを奏でて‐
♪ サプライズ
学校の前には暁くんの車が停めてあって、
あたしはまず、それだけでびっくりした。
「どうかした?言っとくけど、俺うまいよ?」
きょとんとする暁くんを見て、ようやく思い出す。
そっ、そっか。
暁くんって大学生なんだもんね…。
免許持っててもおかしくないか…。
「はい、乗って。」
暁くんはにっこりと微笑んで、助手席側のドアを開けてくれた。
そんな暁くんにあたしは、目でありがとうとだけ伝えて車に乗り込んだ。
その直後、バタンと閉められたドア。
暁くんも、反対側にまわって運転席に乗り込む。
「シートベルト、締めてね。」
やっぱり楽しげな暁くんはそう言って、慣れた手つきでギアを動かした。
…うーん。
暁くんは、女の子の扱いが上手いって言うか、慣れてるっていうか…。
そのわりに、軽薄な感じは全くしない。
ただ単に、リードが上手いだけ??
あーあ、そんなことより…。
あたしは、ハンドルを握る暁くんの横顔のかっこよさに、ぼんやりと見とれて思考を中断した。