【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「ははっ、柚姫ちゃんから見たら俺って兄貴みたいかな。いや、オジサンとか?」
そう言って暁くんは、ちょっとだけ寂しそうに笑った。
「柚姫ちゃん。俺ね、お願いがあるんだ。」
ちょっと、いつもと雰囲気が変わった暁くん。
少しだけ声音が固くなって、表情もなんだか深刻そうだった。
思わずドキリとして、なんだろうと次の言葉を待つ。
そんなとき、信号に差し掛かった車はゆっくりと減速して止まった。
そうして、暁くんは今度は真っ直ぐで、どこか切実で、それでいて意思の強い瞳をあたしに向けて、はっきりとした声で言った。
「今日は俺のこと、兄貴とかオジサンとかじゃなくて、一人の男として見てくれない?」
…え?
「ようは、俺とデートしない?って、お誘いかな。」
いつもの優しい笑みに、凛々しげな雰囲気を纏った暁くんは、この上ないくらいにかっこよかった。
うわ、どうしよう…。
すっごく、嬉しい。