【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
その直後、信号は青に変わって、暁くんはまた車を発進させた。
たぶん、次止まるのはまだ先だろうけど、伝えたい。
あたしは、カバンから例のボードを取り出して磁石のペンを走らせた。
書いた、あたしの気持ち。
声じゃなくても、伝えられる。
心からそう思って書けば伝わるはずだから。
早く信号で止まってくれないかな、そう思っていたときだった。
「また何か書いてくれたの?」
こくりと頷いたあたしを確認した暁くんは、ちょっと待っててと言うと、ゆっくり減速して車を路肩に止めてくれたのだった。
暁くん、わざわざ止まってまで見てくれるんだ…。
暁くんの優しさに、胸がジィンとなって、きゅうってなって、ほかほかして。
暁くんの側は、いつも心地いい。