【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
大きなサメが、他の魚と一緒の水槽で泳いでいた。
食べちゃったりしないのかな、って思ってしまうあたしは夢がないかな。
でも、ほんとに不思議。
あまりに綺麗で、幻想的で。
くるりと暁くんの方を振り返る。
あたしの視線に気づいた暁くんは、ん?って眉を少しあげた。
その暁くんの左手を持ち上げて、手のひらにゆっくりと一文字ずつ文字を綴る。
「…あ、り、が、と、う…。ありがとう?」
それを、確認を取るみたいに一つ一つ読み上げて 、暁くんは首をかしげた。
あたしは、あってるよと頷いて見せると、暁くんは柔和に微笑んだ。
「どういたしまして。ほら、これで満足しちゃだめだよ。次行こう。」
わ…っ!
自然な動作であたしの腕をひく暁くん。
でも、ちっとも強引な感じじゃなくて、速度もゆっくり。
こうやって並んで歩いてたら、周りから見たら暁くんの彼女に見えたりするかな…。
なんて、あつかましいことを思ってみる。