【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
そんなわけであたしは一人、下校中だ。
自身が招いた結果だとはいえ、バカらしくて思わず笑みがもれた。
あの事故で、あたしが失ったものはたくさんある。
この世で最も大切な親友。
友人。
家族。
居場所。
夢。
そして、“声”。
お葬式の翌日の朝、起きたらすでに声は無かった。
お医者さんの診断では、精神的なショックが原因の“失声症”とのことだった。
なんとも言えない気持ちになり、ふぅ…とため息をもらしてなんとなく空を見上げた。
あたしの気持ちとは裏腹に、バカみたいに空はどこまでも蒼くて、深くて、綺麗。
暖かい風が柔らかくあたしの頬を撫でていって、あたしは自然と目を閉じた。
あの向こうに、アキちゃんはいるのかな…――――。
ねぇアキちゃん。
あたしのことを恨んでないのなら、そっちに連れていってよ…。