【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





「…柚。」




優しい声音とともに、ふいに伸ばされた暁くんの右手。




それは迷うことなく真っ直ぐ伸びて、あたしの左頬に触れた。




そして、クスッと笑みをこぼす。





「顔、真っ赤だけど。大丈夫?」






「―――っ!」






そんなことをされれば当然、余計に顔が熱くなるわけで。





顔の火事を消すみたいに、グラスの水を一気に飲み干した。






*********






あたしが食べ終わるのと、暁くんが食べ終わるのはほとんど同時だった。





既に時刻も夜の7時を回っていたので、あたしたちはお店を出ることにした。




結局、やっぱりお金は暁くんが出してくれた。





悪いな、とは思いつつも、ちゃんと“ごちそうさま”と伝えた。





すると暁くんは嬉しそうに、




「いえいえ。美味しかった??」




と言った。





あたしは素直に、“とても美味しかった。”と頷いた。







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