【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
暁くんに手を引かれお店を出たあたしたちは、また暁くんの車でどこかへと向かっていた。
どこに行くの?と聞いても、はぐらかされてしまう。
暁くんだから心配はないと思うけど、どこに行くんだろう…。
やがて車は見覚えのある道に入った。
…この道って、もしかして……。
もう一度暁くんを見上げると、彼はいたずらっぽく笑う。
「気づいた?」
結構早かったなー、なんてこぼしながら空いた片方の手でさっと髪をかきあげた。
親指にはまった指輪がキラリと光る。
「言ったでしょ。今日は君を驚かせる、ってね。」
まだサプライズではなかったんだ…。
充分驚いたんだけどな、色々と。
「俺、ステージの上だとカッコいいんだよ?」
そんな風に冗談めかしく笑う暁くんは、やっぱりかっこよかった。
暁くんは普段から充分カッコいいと思うけど…。
そう思ったけど、あたしはただ笑ってやり過ごした。