君のこれからを僕にください
ユニフォーム
ガラガラガラ・・・。

「まったくサボりすぎなんだよ、卒業大丈夫なのか?」

「高橋に関係ないっしょ」

そういって勝手に保健センターのベットを使うのは、永岡夏希。
ほぼ毎日ここに来て勝手に寝ていつの間にか帰っていく。

ここ中高一貫の仲本学園で、夏希が中2のときに出会った。
そのとき僕は養護教諭としてここに新任として着任した年だった。

そのとき夏希はバレー部のキャプテンで誰もが認める部活少女だった。
学業優先のこの学園で学業も優秀で部活に打ち込むことを非難させる隙も与えないくらい、完璧な生徒だった。
そんな夏希が部活中の事故で膝を負傷し、保健室に運ばれてきたのが僕と夏希の出会いだった。

保健室まで運んできてくれた部員がいなくなった途端、
それまで笑顔だった夏希が急に泣き出した。

「・・先生っ・・あたしの膝すぐ治るかな・・大会まで間に合うかな・・」

キャプテンとしての重圧をまだ14歳の少女が背負っていた。
高校まで野球に全てを注いできた僕にとって彼女のその涙が他人事には思えなかったのだ。

「大丈夫。俺もできるだけ協力するから」

そのとき僕に言える精一杯の言葉を彼女に伝えた。
しかしそのときの怪我が軽いものではないということは僕も夏希も感じていた。

その日僕は彼女を家まで車で送り届け、
次の日からよく顔を合わせるようになっていった。

「失礼しまーす」

部活の時間になると夏希は決まって保健室まで僕を呼びに来た。
部活が出来ない自分の代わりに部活を手伝えというのだ。
最初はバレーの経験もないし養護教諭のまして新任の僕が、
一体何をするんだと思ったのだが、一度部活に顔を出したらその考えは吹っ飛んでしまった。

「はい、そっちからサーブ打って」

運動には自信があった僕でも、しんどい練習だった。
まして僕はただの手伝いでボールを投げたりしているだけだったが、
部員たちはどんなボールにでも必死に対応した。

「じゃあ今日はここまでね」

部員たちが帰る中、夏希が僕の肩をたたいた。

「はいまだ帰れないよ!」





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