君のこれからを僕にください
体育館につながる渡り廊下から中を覗いた僕はためらった。

音の主は、夏希だった。
最近僕のところに姿を見せない夏希のことを思うと、
僕はこのまま帰るべきかもしれない。

でも、3年ぶりにみた夏希のバレーをしている姿を少しでもいいから見ていたかった。

僕は夏希に気がつかれないようにこっそり体育館に入って夏希をぼーっと見ていた。

少し経ったとき夏希が僕に気がついて、

「久しぶりじゃん。元気ー?」

以外にも普通に話しかけてきた。

「夏希・・あの時はごめんな」

夏希はニコニコしながら、

「いーよ。あたしも高橋ならまあいいかなって。・・って冗談。高橋黙ってれば人気あるんだからさ、あたしに同情なんかしてないで恋しなよ!」

夏希はブレザーを抜いてYシャツをまくった。


「あたしさー久しぶりに色んなこと思い出しちゃった」

お互い体育館で過ごしたときより、
夏希はやっぱりだいぶ大人になっていた。

「ほら、高橋。最後の大会のときあたし遅刻したでしょ?あの時もうお母さんが無理だってわかってたんだ。・・でもあたし優勝して帰ってくるから、その代わりお母さんは優勝するまで、あたしが優勝の報告するまで絶対生きててよって・・約束して出てきたんだ」


ほら、まただ。夏希はいつも僕の想像より大きいものを背負ってる。


「悔しかったな・・最後足がどうしても動かなかったとき。あともう少しだから、お願いだから動いてって」

夏希は涙を拭いてこっちにボールを投げた。

「おいっ」

僕も久しぶりの体育館でなつかしい気持ちでいっぱいだった。

僕たちはしばらく冬の体育館で遊んだ。

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