君のこれからを僕にください
「はい?」
僕が不思議そうな返事をすると、夏希はにやっと笑った。
「あたし全然部活出来ないからさ、リハビリがてら筋トレ手伝って!」
僕は驚いたが、夏希の言う通りに手伝った。
動かない足以外、夏希は丁寧にトレーニングをこなしていった。
キャプテンとして復帰まで何もしないわけにはいかなかった夏希は、
部員の前では決して辛い顔も悲しい顔もしなかった。
淡々とこなすその姿に僕は、部活に対する熱意を痛いくらいに感じていた。
「なあ、なんでこんなに頑張るんだ?この学校じゃ部活自体あんまり肯定されないだろ?」
「高橋先生には教えないよ」
中2らしいふざけた言い方だった。
「まああと半年したら引退だし、頑張る時期だしね。最後は絶対優勝したいじゃん」
そして3ヵ月後の4月に僕は養護教諭として異例の運動部の顧問になった。
それには今まで顧問がいなかった夏希も喜んでいた。
しかし僕はそのおかげで、僕は夏希の痛みを共有することになる。
僕が顧問になったとき、夏希の膝も順調に回復して部活が普通でこなせる程だった。
「絶対優勝しようね!」
部員も僕も優勝にむけて必死だった。
それと同時に学校側から圧力をかけられないように授業もテストにも部員は必死で、
その中のも夏希は特に優秀だった。
僕も仕事に支障が出ると言わせないように、必死だった。
気がついたら僕の生活は部活中心でとても充実した毎日だった。
けれど、僕はまだ夏希の抱えていたものを見つけることが出来ていなかった。