君のこれからを僕にください

冬が近づいたある日を境に夏希はサボりに来なくなった。
まじめに授業に出ているのかと思いきや学校にきていないらしい。

心配してバレー部だった子たちが何人が僕のところに来たけれど、
僕は一切何も知らなかったし、夏希がここに来ない以上連絡をとれる手段もなかった。

所詮生徒と教師で教師の僕が深入りできるのにも限界があったし、
夏希も僕も兄貴と妹のような感覚でよっぽど様子がおかしくない限り触れることはなかった。

ただ毎日夏希がサボりにきて僕がそれを受け入れる。

それ以上でも以下でもない。ただそれだけだった。



夏希が来なくなって半月したとき、夏希の担任が僕のところにきた。

「永岡のことなんですが・・ここ最近サボるどころか学校にさえ来てなくて。中学校時代から知ってるのは高橋先生かなと思って・・」

「はあ。そうなんですが最近僕のところにも来ていません」

「そうですか・・僕も3年生になって初めて永岡を担当してので・・なにやら母親を亡くされてから1人暮らしのようで連絡の取り様もなくて」

「は?永岡は1人で暮らしているんですか?父親は?他の家族は?親戚は?」

「え、ご存じなかったのですか?永岡は母一人に育てられて、他に家族はいません。親戚の方が引き取る話もあったみたいなんですが、永岡は拒んでいたようで」

担任が帰ったあと、僕はすぐにコートを羽織って外に飛び出した。
学生が行きそうなところをしらみつぶしに探した。
永岡の家にも行ったが、3年前に引き払われていた。

「あいつ3年間も・・一体どこに住んでんだ・・」

とにかく僕は探した。
でも見つからなかった。

夏希の友達にも当たったが夏希はどこにもいなかった。

僕は悔しかった。その思いが僕を突き動かしていた。
あれだけ毎日会ってきたのに、何も知らない自分が悔しかった。

夏希は今どこにいて今何をしてるのか、
本当に妹のように思ってたのに何も知らない。

夏希は3年もの間、1人で耐えてきたに違いなかった。





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