思い出は消えない

病室に入り、私は萩夜の手を握った。

「大丈夫…?」

私のそんな問いかけに萩夜は笑った。

「ご…め…な…動物…園…で…ゆ…くり…できな…くて」

萩夜はまだ

はぁはぁと息切れをしていた。

「ううん。真嬉が出掛けようなんて誘ったから。ごめんね。もう、しゃべらなくていいよ。少し寝たら?」

萩夜は小さく頷くと

目を閉じて

スースーと音をたてていた。
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