もしも私に魔法が使えたら【短編集】
「あげてないよ!」
「そっか」
だから尚更特別感がするから渡せなかった。
「俺はてっきり野村から貰えるんだとちょびっとだけ期待してたんだけどなー」
「それは私にくれと遠回しに言ってるの?」
「あっはは!ちげぇよ!ただちょびっと残念だったって話!」
私……がっかりさせてしまったの?
彼、期待してくれてたのに……。
私の……馬鹿者。
「明日の……放課後、待っててくれたら渡してあげる……カモ」
「……かも?」
こくりと頷く。
そう、“かも”だよ。
私にそれだけの勇気があれば……。
だけど私に告白する勇気がなければ渡さない。
渡せない。
「美味しくないかもしれないし、期待はしないでよ?」
「了解」
ああ……男子なのになんて可愛いんだろう。
なんだか犬みたいに人懐っこくて……。
私には無いもの……。