もしも私に魔法が使えたら【短編集】
「早紀、兄ちゃ……ん」
「ん?」
「私と駆け落ちして!!」
「は?」
「私、昔からずっとずっと早紀兄ちゃんが大好きだったの!今もすっごく好き!!」
「ははっ」
笑う。早紀兄ちゃんは笑うとよりいっそうカッコよくなる。
だから女の子前で笑わないでぇ
っていつも思ってた。
ううん、思ってるの。
「あーんなチビッコかったミナハがこーんなおっきくなってんだもんなー」
そうやってはぐらかすんだ。
ずるいよ。
「ときめかないわけないだろう?」
嘘……。
「あの時には無かったモノが今の俺にはあるんだ。ミナハ……好きだ」
「先生……」
「やめろよ……なんかミナハに言われるとむず痒い」
「先生、なんだよね」
「ああ……だからさ」