もしも私に魔法が使えたら【短編集】
バレンタインデーって特別。
だけど私には好きな人に渡す勇気なんてない。
「千代ちゃん!はい」
「ありがとー!私からも、はい」
バレンタインは女の子が好きな人にチョコをあげる日だけれど、
学校でなんて、
女の子が仲の良い友達に渡す行事。
「千代ちゃんはあげるの?」
「あげないよ!作ってないもんっ」
「ええ!?勿体無!」
「いいの別に!」
そう、渡さなくていいの。別に。
あの人にあげるチョコなんて用意してないし。
あげるなんて恥ずかしいし、特別な感情があるの……バレるなんて嫌。
失恋なんて怖いから、想いは伝えない。
それでいいの。
それがいいの。
だからゴメンね……。
どうか私のことは放って置いてよ……。