恋するマッシュルーム
だけど、毎年のバレンタインは酷かった。大変だった。
コーヘーに渡してくれと頼まれる数が多過ぎて、断り切れないぐらいだった。
私が断ると、「カナちゃんコーヘー君の事好きなの?だから渡してくれないの?」なんて、涙目で私が悪者扱いされたからだ。
だからバレンタインは渋々引き受けたりもしてたけど、コーヘーに直接渡すのが嫌で、頼まれたチョコは袋にまとめてコーヘーの家のドアノブに掛けて置いたりしていた。それでも置ききれない分は玄関前に置いたりしてた。
だけど、ソレが私の仕業だとコーヘーは気づいていたのだろう。
ホワイトデー近くになると、必ずコーヘーに『オマエのせいで金欠だ、金寄越せ。』と脅されていたからだ。
コーヘーは血も涙もない非人間的ヤローのくせに、貰ったものへのお返しは律儀にしていた。
勝手に私がチョコを頼まれて来るせいで、ホワイトデー近くになるといつも『金がねぇ』とボヤいていた。
まぁ、そのお返しも私が女子達に配らされるハメになってたんだけどもね!
そんな可哀相過ぎる青春時代を送っていたせいで、よくよく考えてみたら、私はコーヘーにバレンタインのチョコというものをあげた事がない。
まぁ気づいた所であげたくも無いんだけど。
あんだけチョコ貰いまくってるコーヘーには、私がおすそ分けをして貰いたいぐらいなんだけど。