27年後の王子様
【アラサーの現実】
美しく艶やかな黒い髪。
透き通るような白い肌と、男のコだというのに色気を匂わす赤い唇。
目の前の爽やかな青年は、いわゆるイケメン。……いや、まさしく美形。
認めたくはないけど、顔が良いというだけで第一印象が良いというのは、あながち間違っていないと思う。
従業員用の食堂で、私は柔和な笑顔を浮かべる青年の顔と履歴書を交互に見つめていた。
「女の子だと思ったの。」
私の言葉に、青年は一瞬目を丸くした。
「あぁ、ごめんね。名前。私、てっきり“サクラ ケイくん”じゃなくて“サクラ ホタルちゃん”って。」
青年の電話を受けたのは、早番だった香織さん。
几帳面な性格の彼女は、青年の名前を漢字でメモしていた。
『佐倉 蛍』。
私は、てっきり女の子だと思っていたのだ。
「よく間違えられます。」
青年はそう言って困ったように笑った。