27年後の王子様
私は、青年の履歴書に視線を落とす。
21歳、大学生か。
接客業の経験はないようだけど、人当たりは良さそうだし。
何より男手が足りなかったから、丁度良いかもしれない。
それにしても、
ここのショッピングモールは換気がバカなのか、暖房がアホなのか、酷く乾燥する。
まぁ、今に始まったことじゃないんだけど。
つい、どうでもいい事まで考えていると、青年が口を開いた。
「俺も、勘違いしてたんです。」
「え?」
私が顔を上げると青年は、名前、と呟く。
その視線は、私のあずき色のエプロンに付いた名札に向けられている。
『岡田』と書かれたそれを、青年は見つめて言った。
「電話で“ヨシノさん”って言ってたから。“吉野さん”だと思ってました。」
……香織さん、いくら店で“芳乃さん”が定着してるからって…。
そういう時は“店長”でお願いしますよ…。
「よく間違えられるわ。」
「良い名前ですね。」
「え?」
お世辞だと分かっていても、悪い気分はしないものだ。
それに少し、ドキッとしてしまった。
6つも年下のオトコに。