■溺恋■
「こころ」
「なに?」
「ごめん、もう俺っ」
「リュウくん?!」

リュウくんは
抱きついてきた

びっくりした

でも
なんとなく
こうなることが
雰囲気から
分かっていたから
驚いた
ふりをしただけ
かもしれなかった


「リュウくん!?ちょっ、待って」
いちおう
あたしは抵抗する
でも
リュウくんの腕は
力強くて
どうしても
ほどけなかった


「ねぇ、リュウくん」
抱きつかれたまま
立ち尽くし、
最初に口を開いたのは
あたし
「リュウくん?」
「もう、リュウでいいから」
「わかった」
「呼んで?俺の名前」
「リュウ?」

体操服ごしに、
リュウの呼吸が
伝わってくる

あたしの
胸も
上下している

長身のリュウは
身をかがめて
あたしの胸に
顔をうずめた

「こころ・・・」

くぐもった声で

「俺、こころのことっ」

そこまで
告げると
リュウは
あたしの胸から
顔を
あげ、

あたしの
唇を
奪った



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