■溺恋■
サトルの声が
聞こえた


サトルの
シカトする前の
最後の声が



携帯電話ごしに
チョコちょうだいって
言った
声が






あのとき
あたしは
どんな気持ちだった?


あったかくて
こらえきれないほど
嬉しくて


その場で
きゃーって
はしゃぎたかった






サトルが
すき

サトルが
だいすき


サトル・・・
サトルサトルサトルサトルっ
















「いやっ」
あたしは
口に入ってきた
リュウの舌を
拒んだ

リュウは
我に返ったような顔をして
抱きついていた
体を
はなした

そして
顔を
くしゃくしゃにして
泣いた

「ごめん、ごめん、こころ」

そう言いながら、
泣いていた


あたしは
その背中を
優しくなでた


いつの間にか
あたしの
頬にも
涙が伝っていた



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