わたしとあなたのありのまま
 『苦手』通り越して『嫌い』ですか?
 それって女としてどうよ? と思う。


「だからって、なんで私が?」

「お前は好きだろ?
 うちの子たちを愛おしげに見てただろ?」

 いつそんなところを見られたのだろう。
 初めて田所がバイト先のコンビニに現れた、あの時以外に考えられないけれど。


「『うちの子』って。
 田所、バツイチだったんだ!?」

「はいはい、寒いギャグで思いっきし滑ってないで、早く来い。
 浅井薬局向かいの板金屋な」

 一方的に言い捨て、電話を切った。

 プーップーッ、という機械音がやけに耳触りで、私もすぐに携帯を手離した。


「私をなんだと思ってんだ。
 召使いだって、もっとまともな扱いされるわ!」

 などとブツブツ文句をたれながらも、急いで身支度を整える。

 勝敗は最初から決まっていた。
 男女の戦いなど、惚れている方が必ず負けるのだ。


< 111 / 318 >

この作品をシェア

pagetop