わたしとあなたのありのまま


 浅井薬局の向かいの板金屋は、倉庫のような建物だった。

 開け放たれた入口から、数台の自動車が見える。
 その横に、上半分がガラスになっている壁で仕切られた、事務所らしい場所がある。

 恐る恐る近付いて、中を覗いてみた。


 30代前半ぐらいの女性と、あの日、田所が連れていた二人のおチビさんがそこにいた。
 
 女性は机に向かい、しきりに電卓を叩いては、開いたノートに何かを書き込んでいる。
 奥のソファーには、例の兄妹が並んで腰かけていた。


 ポータブルゲームで遊ぶお兄ちゃん、その横から画面を覗いている妹。

 愛くるしいです。
 見ているだけで癒されます。


「遅ぇよ」

 背後から不機嫌な声を浴びせられて振り向くと、
 薄いグレーの上下作業着姿の田所がいた。


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