わたしとあなたのありのまま
「秋山ほのかです」
事務所へ入って、ペコリと頭を下げた。
女性はわざわざ席を立って出迎えてくれた。
「田所志穂(シホ)です。
ごめんね、無理言っちゃって」
申し訳なさそうに志穂さんは苦笑した。
「いえ、どうせ暇ですから」
そう答えて笑うと、志穂さんもホッとしたように微笑んだ。
「悠ちゃんから、私たちのこと聞いてる?」
『悠ちゃん』とは、多分――いや、間違いなく田所のことだ。
後でからかってやろう、と良からぬことを企んで、心躍らせる。
「いえ、何も。
情報ゼロです」
「やっぱりね」
軽く握った右手を口元に当てて、クスクスと笑って志穂さんは言った。
「悠ちゃんのお兄さんが私の旦那さんで、一応ここの経営者なの。
この子たちは、私たちの子どもで、
悠ちゃんはこの子たちの叔父さんになるのよね」
志穂さんは、幼い兄妹にチラと視線をやって、悪戯っぽく笑う。