わたしとあなたのありのまま


 お昼ご飯は、どこかから配達されたお弁当を、事務所でご馳走になった。

 田所は事務所内ではなく、作業場に無造作に置かれたタイヤの一つに腰を落とし、相変わらず豪快に食べていた。

 その横にお兄さんらしき人。
 とても仲良さそうに、時々会話を交わしたりしていた。


 そんな様子をガラス越しに眺めていると、

「ほのかちゃんは、いつから悠ちゃんと付き合ってるの?」

 志穂さんが唐突にそんなことを聞くので、箸で摘まんだイモが、ポロリとこぼれ落ちた。


「え? 私、田所の……
 田所くんの彼女じゃないです」

 咄嗟に否定すると、志穂さんは不思議そうに私を見た。

「悠ちゃんから、彼女って聞いてるけど?」

「田所くんの彼女は……」

 『エリカ先輩』と言おうとして、ふと、田所はもしかしたら、エリカ先輩のことを志穂さんに知られたくないのかも、とそんな風に思った。


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