わたしとあなたのありのまま
 そうして、さっき私がしていたみたいに、空を見上げる。

 一番星、田所も見つけたかな。


「ねぇ、何してんの?」

 田所が私に付き合ってくれていることが不思議で、聞いてみた。

「なんとなく。
 ここからの景色、どんなだったかなぁと思って」

 顔は上を向いたままで田所は答えた。

 その横顔は、
 何故だかとても幻想的で。

 田所がこの頭上に広がっている大空に吸い込まれてしまいそうな、そんな錯覚を覚えて不安になった。


 不意に田所が視線を空から私へ移すので、私の身体はビクンと跳ねた。

 そんな私の反応などお構いなしで、田所の漆黒の瞳は私に真っ直ぐ向けられる。


「な、なに?」

 おどおどしながら尋ねると、

「お前に飯奢ってやれって、兄貴が金くれた」

 とすました顔のまま答える。


 だから、
 そんなにまじまじと見ないでくれよ。


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