わたしとあなたのありのまま
「焼肉でも食いに行くか?」

 言って、田所はいたずらっ子のような笑みを見せた。

「え? そんなに貰ったの?」

 思わずそんな言葉が口を衝いて出た。


「うわっ、お前、がめつい。
 引くわー」

 言って田所は可笑しそうに笑う。

 調子づいた私は、

「二人で半分こして横領って手もあるよ」

 と心にもないことを言ってみる。
 もちろん、
 『田所と焼肉』の方がいいに決まっているのに。


「お主も相当の悪よのぉ」

「いえいえ、お代官様こそ」

 時代劇の決まり文句を交わして、二人で笑った。


「いいわ、俺、肉食いたい」

 言うなり田所はフワッと宙に舞った。
 難なく着地すると、私を見上げ、

「行くぞ。さっさと降りろ」

 と言った。


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