わたしとあなたのありのまま


 結局、焼肉は食いそびれてしまった。


 あの後田所は、有り得ないほど凹んでしまっていて、私は静かにそっと、田所の部屋を後にしたのである。

 私のファーストキッス(あえて『キス』ではなく『キッス』でいかせてもらいます)奪っておいて凹むとか……
 なんとなく気持ちはわかる、わかりたくないけれど。

 でも、
 失礼過ぎやしませんか?


 田所は正直過ぎるのだ。
 ヤツの正直さが、あの不器用さの根底にあるのだと思う。

 その不器用さに惹かれてしまったのだから、文句を言う権利は私にはないのだけれど。



 土曜、日曜に引き続き月曜日、学校でも私はポワワワ~ンとしていた。
 だって、私は田所と……

 未だに信じられない。
 キッスも、田所の言葉も。


『ありのままのお前に、
 俺は惹かれ始めてる』

 うっひゃぁ~。

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