わたしとあなたのありのまま
 しまった、山田に告られたことを、まだ綾子に話していなかった。
 私ったら、なんというウッカリさん。

 山田も綾子も私の不可解な行動に、凍りついたように固まって、キョトン顔をしている。

 やがて、

「そうなの?」

 と山田が私に問う。


「いや、だから、そうじゃないんだって」

 もう、さらに面倒くさいヤツ登場だよ、参ったよ。


 と、その時、

「お~い、山田、行くぞ」

 という有難いお声が、教室入り口から山田に向かって投げられた。

「ああ、俺、今日学食行く約束してたんだったわ。
 じゃあな」

 言って、山田は私と綾子に向かって軽く手を上げて見せ、小走りでその友だちの元へと向かった。
 よっしゃぁ、と心の中でガッツポーズ。


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