わたしとあなたのありのまま
山田の後姿が見えなくなるのを見届けてから、綾子に山田に告白されたことを打ち明けた。
「マジか……」
そう呟いた綾子は、それっきり口を閉ざしてしまい、呆然としている。
「だから、今後田所の話は、山田の前では一切ナシの方向でお願いします」
丁寧に頼んでみる。
「は? 意味わかんないんだけど。
尚更、山田に話して諦めさせてやった方が、優しいじゃんか」
「え……だって。
今はまだ、中途半端っていうか、なんていうか……」
つい、語尾が濁ってしまう。
「ほのか、まさか山田に諦めて欲しくないとか?
いつまでも好きでいて欲しいとか?」
綾子はわざと意地悪なことを言う。
う~ん、ちょっと違う。
でも、巧い言葉が見付からない、自分の気持ちが伝えられない。
田所は、えりか先輩と別れるとか、私と付き合うとか、そういうことは一言も口にしていないわけで。
そんな中途半端な状態を、なんとなく山田には知られたくない。
私の中の、実に曖昧な感情が拒否している感じ。
自分でも良くわからない。