わたしとあなたのありのまま
「てめぇ……
 くそムカつくなぁ」

 山田は田所の足元に身を低く落とし、田所の襟元を左手で乱暴に掴み上げると、右拳を高く振りかざした。


「はい、そこまでー」

 誰かが呼んだのだろう、生活指導の鵜飼先生が、野次馬の生徒たちを掻き分けながら、輪の中へと入って来た。
 男子の喧嘩など慣れっこなのだろうが、そのあまりにも淡々とした口調は、若干面倒くさそうでもあり、どうでも良さそうでもあると感じた。


 今にも殴りかからんとしている山田と、対する無抵抗な田所、二人の姿を目にした鵜飼先生は、軽く溜め息をつきながら呆れたように言った。


「またお前か、田所」


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