わたしとあなたのありのまま
「おー、行ってこい、行ってこい。
 悪ぃな、気ぃ使わせて」

 しかめっ面の山田が、シッシッと田所に向かって手を振りながら言った。

「ああ、気ぃ使ったよ。
 邪魔もんは消えるから、お前ら二人、そこでイチャこいてろ」

 そう吐き捨てると、田所はクルリと身体を回転させ、私たちに背を向けて歩き出した。


「ねぇ、山田。
 何があったの?
 だいたい想像はつくけどさぁ」

 正座はとっくに崩し、膝を抱えた格好で隣の山田の顔を覗き込む。
 山田も片膝を立てたくつろぎ座りで、正面を向いたまま、そんな私に目線だけを寄越した。


「あいつがエリカ先輩と楽しそうに飯食ってたから、ムカついたんだよ」

 親に叱られた子どものような、ふて腐れた顔をして山田は答えた。

「ほら、お前らがあんなこと言ってたからさぁ、『なんで別れねぇの?』って思わず俺、あいつに言っちゃったんだよね」

 そう言って、山田は私から視線を外し、しょんぼり俯いた。


< 153 / 318 >

この作品をシェア

pagetop