わたしとあなたのありのまま


 慌てて拾い集めて渡すと、

「俺のジュニア、まだ元気だから見るなよ」

 と、また意味不明なことを言う。

 『見るなよ』は理解できたので、一応その言葉に従うことにした。
 田所に背を向け、膝を抱えて座り直す。

 つま先を見詰め、布が擦れる音を背中で聞いていた。

 すぐにその音は止み、私の背後、すごく近くに田所を感じた。
 ――と思ったら、田所の両腕が私の胸に巻きついて、


 私は田所に包まれた。


 とても温かくて、心地いい。


「俺、待てるから」

 田所は、その頬を私の頬に摺り寄せて囁いた。

 そんなたった一言で、私の心は火が灯されたように温かくなる。
 けれど、夢心地に浸る間もなく、田所は続けた。

「けど、ちょっとだけな。
 その間に、セックスのこと勉強してこいな。
 ついでに男を喜ばせるテクなんかも、マスターしてきたら、尚良し」


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