わたしとあなたのありのまま
『なに電話出てんだよ? ちゃんと仕事しろ』


電話の相手は、自分がかけてきたくせに、そう言った。



さっきは聞けなかった声。聞けなくて、有り得ないほど凹んでしまった、田所の声。
 

嬉しくて胸が高鳴った。


でも、勝手に私の携番見たってこと? やっぱりこいつは、とんでもない悪党だ。



「うん、仕事する。だから切るよ?」


電話越しだからお前なんか恐くない、と。自分自身に言い聞かせる。



『おい』

「何?」

『待ち受け見た?』

「見てない」

『そんなことだろうと思った』

「なにが?」


意味不明なやり取りが続き、だんだんと苛立ってきた。



「俺からのプレゼント、受け取って」



なんだか意味深な口調でそう言い、田所は電話を一方的に切った。


< 24 / 318 >

この作品をシェア

pagetop